安心、安全な野菜を手に入れたいとき、「無農薬」という言葉を思い浮かべたり、「オーガニック」、「有機栽培」という表示を目にしたりすることがあると思います。
そんな時、オーガニックは無農薬なのか、あるいはオーガニックと有機に違いがあるのか、判断に迷う方もいるのではないでしょうか。
ここでは「オーガニック」「無農薬」「有機」について説明し、さらに安心、安全な野菜を選ぶときの判断目安を紹介します。
もくじ
「オーガニック」と「有機」は同じ意味
「オーガニック(organic)」と「有機」は同じ意味です。
有機は「生命力を持っていること」や「生き物」という意味です。そうしたことから、オーガニック(有機)には、「自然の生態系を壊さず、自然の力や生命力を活かす」といった意味もあります。
では「オーガニック」と「無農薬」の関係はどうでしょう。
「オーガニック」と「無農薬」は違う
オーガニックと無農薬は違います。そこでオーガニックと無農薬に、どのような違いがあるのか、いくつか紹介します。
違いの1 農薬の有無
オーガニック栽培では指定範囲の農薬であれば、使用が認められています。
一方の無農薬栽培では、文字通り無農薬で栽培します。
オーガニック栽培では一部の農薬が使える
オーガニック栽培では、JAS(日本農林規格)が認定している農薬であれば、使用が認められています。ですから、オーガニックは無農薬ではありません。
(ワンポイント豆知識)
JAS(日本農林規格)とは?
JAS(日本農林規格)とは、法律に基づいて制定されている農林水産分野の制度です。農産物や畜産物、食品などの品質や生産方法が、JAS(日本農林規格)の定めた基準を満たせば、オーガニックの認定を受けることができます。
(ワンポイント豆知識)
オーガニック栽培で、使える農薬は、どのような種類?
オーガニック栽培では、天然の原料からできた農薬であれば使っても良いことになっています。
農薬には、化学的に合成されたものもありますが、それらを使用した場合は、オーガニックと認められません。
(参考)有機(オーガニック)で野菜類に使用が許容されている農薬一覧:日本土壌協会
無農薬栽培は文字通り無農薬で栽培する
無農薬栽培では、化学的な農薬だけではなく、天然の原料からできた農薬も使いません。
では無農薬はオーガニックよりも安心・安全かと言えば、必ずしも、そうとは言えません。
完全に無農薬で栽培することは、難しい事情があるからです。
完全無農薬で栽培することが難しい理由
1.まわりの田畑から農薬が飛んできたり、過去に使われた農薬が残っていたりする可能性がゼロではないこと
たとえば、私は自家用として農薬を使わずに野菜づくりをしていますが、隣接する周囲の畑では、除草剤や殺虫剤が使われています。
同じように、自分の田畑では無農薬で栽培しても、周囲の環境によっては、農薬の影響を受けてしまう可能性があります。
2.当人は農薬と思っていない薬剤を使っている可能性があること
一般的に、農薬=殺虫剤 という印象を持つ方が多いと思われます。しかし実際には、殺虫剤以外にも、農薬として扱われている薬剤はたくさんあります。
たとえば、私に除草剤を薦めた農家さんがいました。
私が農薬を使わずに野菜を栽培していることを知っている農家さんだったのですが、その方は、「除草剤は農薬ではないから」と言っていましたので、大変驚きました。
このように、当人は農薬と思わずに、農薬を使っているケースも考えられます。
(ワンポイント豆知識)
除草剤
雑草を枯れさせる農薬。農作物を栽培している場所で使用する除草剤は、農業に使用できる種類に限るよう義務付けられています。
ホルモン剤
ホルモン剤は、植物の成長に関わる部分に作用する農薬です。たとえばトマトの花に吹きかけることによって、実を付けやすくするといった目的で使われます。
違いの2 認定制度の有無
オーガニックには認定制度がありますが、無農薬にはありません。
オーガニックには認定制度がある。
オーガニックは、規定や条件を満たし、第三者(登録認証機関)の検査を受けて合格すればオーガニック(有機)として認められます。
そしてオーガニック(有機)の文字やマークの表示は、認定を受けた商品にのみに許可されます。
無農薬には認定制度がない
無農薬には、農薬を全く使用していないことを認定する制度がありません。
そして前述したように、無農薬かどうかを明確に証明することは難しく、生産者さんの判断によるものとなります。
そのため、たとえ無農薬で栽培していたとしても、「無農薬野菜」や「無農薬栽培」といった表示は禁止されています。
違いの3 目的
オーガニック農法は、化学的な農薬や肥料に頼らず、太陽や水、微生物など自然が持つ力を活かした土壌づくりがベースです。それによって、健全な食物連鎖を目ざし、さらには人だけでなく、すべての生き物にとって、自然で健やかな環境や社会を実現させることを目的としています。
一方の無農薬栽培では、農薬を使用しないことで、安全な野菜を食べたいと思う消費者さんのニーズを叶えることが大きな目的と言えます。農薬を使用しないことで、土壌や環境の保全にもつながりますが、無農薬栽培は、それがメインの目的ではありません。その点がオーガニックとは異なります。
オーガニックのメリット・デメリット
メリット
- 第三者によってチェックされているので、安全性の信頼感が高い
- 認定マークがあるので、オーガニックだと判別しやすい
- 化学的な農薬や肥料が使われておらず、遺伝子組み換えもないので安心感がある
- 自然環境の保護に貢献する
- 美味しい
デメリット
- 価格が高い
- 流通量が少ないので手に入りにくい
- 無農薬ではない
無農薬のメリット・デメリット
メリット
- 農薬が使われていないので安心感がある
- 美味しい
- 自然環境の保護に貢献する
デメリット
- 完全な無農薬ではない可能性がある
- 第三者によるチェックがないため、信頼度があやふや
- 無農薬の表示がないため、判断が難しい
安心、安全な野菜を選ぶときの判断目安
①商品に有機JAS認定マークの表示があれば、オーガニック商品だと判断できます。
https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html
②「無農薬」の表示は禁止されていますが、それに代わるものとして、「農薬:栽培期間中不使用」という表示があります。
これは「栽培している間、生産者さんは農薬を使用していない」という意味です。
ほかにも「農薬不使用」や「農薬を使っていません」と、表示されている商品もあります。これらは、「農薬:栽培期間中不使用」と一緒に表示することが義務付けられていますので、「栽培している間、生産者さんは農薬を使用していない」野菜です。
まとめ
オーガニックは有機と同じ意味です。 オーガニックは、天然由来であれば農薬の使用が認められています。
またオーガニックには、第三者機関(JAS)による認定制度があります。そして認定をもらった商品だけが、オーガニック(有機)と表示することを許可されます。
一方の無農薬は、農薬を一切使用しないことを意味します。
しかし無農薬には認定制度がなく、残留農薬の有無も、生産者の判断任せになります。
そのため、商品に無農薬と表示することは禁止されていますが、それに近いものとして、「農薬:栽培期間中不使用」という表示があります。
安心、安全な野菜を選ぶときの参考にしては、いかがでしょう。